2010 Fiscal Year Annual Research Report
17世紀前半セビーリャにおけるイエズス会の思想と絵画に関する研究
Project/Area Number |
09J07778
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
諸星 妙 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(PD)
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Keywords | ベラスケス / フアン・デ・ラ・サル / コンベルソ / イエズス会 / 誓願修道院 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度中心的に行ったセビーリャのイエズス会士についての調査をさらに発展させ、関連する人物たちのリストアップにとどまらない、より掘り下げた調査を行った。その結果、セビーリャのイエズス会誓願修道院主祭壇装飾の出資者であったイエズス会士のフアン・デ・ラ・サルについて、ユダヤ教徒から改宗したコンベルソを祖先に持つ人物だということが明らかになった。この人物は、申請者が本課題の重要な研究対象のひとつに位置づけているベラスケスの《東方三博士の礼拝》の依頼にも関連していると推定されている人物であり、申請者が既発表の論文(2008年)で明らかにしているように、ベラスケス自身がコンベルソの家系であり、その出自がその作品の内容にまで影響を与えている可能性が高いことを考慮するならば、これは決して看過し得ない事実であり、本研究において、大きな意義のある成果であったと言える。この人物は、当時、文人らによっても賞賛される博識な人物として知られており、幾つかの著作を残していたことも明らかとなった。これらの著作を可能な限り入手して、その思想についても調査を行った。一級の知識人として知られたパチェーコ、およびその愛弟子であったベラスケスと近い関係にあったことが推定されることから、このイエズス会士の思想は同時代のイエズス会のための絵画を考える上で非常に重要なものであり、今後さらに踏み込んだ検討を進めていく。 また、フアン・デ・ラ・サルが出資した誓願修道院をはじめとする、セビーリャのイエズス会関連施設のための絵画・彫刻作品の詳しい内容調査も実施した。当時の建築が残っていない施設については設置環境を明らかにすることは難しかったが、当時の思想環境と絵画作品との関連を実証的に明らかにするという本課題の最終的な目標に向けての基礎資料として、イエズス会関連施設に設置された絵画・彫刻の作者・主題等の目録化を進めた。
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