2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J07789
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山崎 大 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 全球河川氾濫原モデル / 拡散波方程式の計算安定性 / 衛星デジタル地形モデル / 衛星高度計 / データ同化 |
Research Abstract |
今年度は、昨年度に開発した全球河川氾濫原モデル「CaMa-Flood」の改良に取り組んだ。CaMa-Floodは、全球モデルの解像度では表現することが出来ない河道や堤防などの微地形を、サブグリッドスケールでパラメータ化することで貯水量・氾濫面積・水深の関係を衛星DEMから導出する。1つ目の大きな改善は、支配方程式である拡散波方程式の安定化である。現実的な水面標高の予測が可能となったため、水面勾配に基づく拡散波方程式での流量予測を試みた。しかし、拡散波方程式に含まれる計算不安定が問題となっていたが、疑似的に加速度項を考慮することでの計算の安定化に成功した(論文発表済み)。2つ目の改善は、地形パラメータの元となる衛星DEMの修正である。衛星レーダー観測に基づくDEMには植生キャノピーによるバイアスや、ピクセル解像度未満の川幅の河川を解像できないなどの問題がある。これらの誤差を、表面流行データの上流下流の関係を用いて修正することに成功した(論文に投稿、リバイス中)。他にも川幅水深パラメータの改善、河口境界条件の与え方の改良等により、開発した全球河川氾濫原モデルによる大河川の水循環予測精度は大幅に向上した。また、7月から12月の6ヶ月間、米国オハイオ州立大学のDoug Alsdorf教授を訪問した。主な目的は2019年に打ち上げが予定されているNASAの衛星観測ミッション「SWOT」を用いた今後の研究可能性を議論することである。SWOTはKaバンドの合成開口レーダを用いて、全球の水面標高変動を観測する。将来データ同化を用いてモデルとの統合を目指す方向で研究を進めることに合意した。また、現状のモデルによる水面標高予測の精度を確認するため、Nadir Altimeterを用いた検証も行った(学会発表済み)。今後は、モデルによる水面標高の予測精度向上を目指し、さらなる改善を行っている。
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