2009 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理計算とモデル計算の融合による遷移金属酸化物界面の物質設計と物性制御の研究
Project/Area Number |
09J07811
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平山 元昭 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1
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Keywords | 強相関電子系 / 遷移金属酸化物 / 界面 / 第一原理 / ダウンフォールディング法 |
Research Abstract |
報告者の研究目的は遷移金属酸化物の示す多彩な物性を利用し、界面でのドープ量制御・物性制御の方法論を理論的に提案し、新奇な物性の可能性をモデル計算・第一原理計算両面の手法を駆使して提示することである。 昨年度は、遷移金属酸化物界面LaAlO3/SrTiO3(LAO/STO)の物性を明らかにするために、LAO/STOの低エネルギー有効模型を第一原理的に導出した。まず、DFT/LDAに基づきLAO/STOの低エネルギーから高エネルギー領域にわたる広いバンド構造を決定した。次にバンドを高エネルギー領域と低エネルギー領域に分け、高エネルギー領域の効果をRPAの範囲で低エネルギー領域へ繰り込む。しかし、LAO/STOのバンド構造は、物性を担う界面のTiのt2gバンドからバンド絶縁体であるバルクSTO領域のTiのt2gバンドまでがフェルミ面付近に連続的に分布し、さらにLDAの範囲ではLa 4fバンドが界面のTiのt2gバンドと混成しており、低エネルギー領域を指定することが困難である。そこで、まずLDAで考慮されていない自己エネルギー補正をGW近似で導入し、La 4fバンドをより相応しい高いエネルギー準位にし、界面のTiのt2gバンドとの混成を解いた。次に、界面近傍の最局在ワニエ軌道で低エネルギー領域を定義して、そこから軌道別のトランスファー積分および化学ポテンシャルを求めた。さらに、一般の絡み合ったバンドから最局在ワニエ軌道による低エネルギーバンドと他のバンドを分離する手法をLAO/STOに適用し、界面のTiのt2gバンドとバルク領域のt2gバンドなどその他高エネルギーバンドとを分離した。制限RPA法によって界面のTiのt2gバンドに対する遮蔽されたCoulomb相互作用、および交換相互作用を計算し、LAO/STOの低エネルギー有効模型を決定した。界面のバンド構造はバルクSTOと大きく異なるが、得られたパラメーターはバルクSTOのものと概ね変わらないことが分かった。また、界面のxy軌道が他のt2g軌道よりも数十meV程度エネルギーが低いなど、界面における空間反転対称性の破れが各種パラメーターに現れていた。本研究は表面・界面系へダウンフォールディング法を導入した初めての成果である。
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Research Products
(2 results)