2009 Fiscal Year Annual Research Report
炭化ケイ素ダイオードによる室温動作可能な陽子線・ベータ線検出器の開発
Project/Area Number |
09J07821
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
岩本 直也 The University of Electro-Communications, 大学院・電気通信学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 炭化ケイ素 / ダイオード / 粒子検出器 / アルフア線 / ベータ線 / 欠陥 / 放射線 |
Research Abstract |
室温動作可能な粒子検出器としての応用が期待できる炭化ケイ素(SiC)ダイオードについて、基本的な粒子検出特性を明らかにするための研究を行った。はじめに、SiC基板上にPNダイオードを作製し、電気特性の評価を行った。電流電圧測定の結果、ダイオードのリーク電流は、高い逆バイアス電圧を印加した状態でも非常に小さく、粒子検出器として適した特性が示された。ダイオードの粒子検出特性を評価するために、放射性同位体から放射されるアルファ線、およびベータ線の検出実験を行った。その結果、アルファ線に対しては、優れた検出効率が示されたが、ベータ線に対しては、明確な信号を検出することができなかった。これは、ベータ線の信号がアルファ線に比べ小さく、十分な信号対雑音比が得られなかったためだと考えられる。これらに加えて、ダイオードの耐放射線性の評価を行った。ダイオードに電子線照射を行うことでSiC結晶中に欠陥を誘起し、その前後でアルファ線に対する検出効率を比較した。その結果、検出効率は電子線の照射量の増加に伴い低下し、検出効率の低下速度は照射する電子線のエネルギーと比例関係にあることが分かった。一方、あるエネルギー以下の電子線照射では、検出効率が全く低下しないことが分かった。これらの結果は、電子線照射によるSiC結晶中の原子のはじき出し損傷効果によって説明できる。今後は、ベータ線検出のために、ダイオードだけでなく信号増幅器など測定装置の低雑音化を図る予定である。また、放射線によって誘起される欠陥を詳しく調べ、欠陥の修復方法の検討などを行う予定である。
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