Research Abstract |
本研究では,極微細半導体量子ナノ構造において,光,電子スピン,核スピン間の相互作用の最適化と制御を,光検出を組み合わせた高感度・高空間分解能を有する核磁気共鳴(NMR)により行い,固体量子情報デバイス応用への可能性を探索することを目的としている。本年度は,n型(110)GaAs/AlGaAs単一量子井戸を対象として核スピンコヒーレンス制御に関する研究を行った。<1.超微細相互作用の電界制御>ここでは,NMRによる核スピン量子操作と高感度光検出をより効率的に行うことを目的として,核スピン緩和の一要因である接触フェルミ超微細相互作用(電子スピンとの相互作用)制御の可能性を探った。まず,試料表面に半透明ショットキーゲートを形成し,井戸内の電子濃度を変調可能にした。核スピン緩和時間の測定には,NMRを組み合わせた時間分解カー回転測定を用いた。本実験から,エネルギー緩和時間,コヒーレンス時間ともに電子濃度に大きく依存することが明らかになり,前者は10倍以上,後者も2倍近く制御可能であるという結果が得られた。<2.四重極相互作用の制御>核スピン緩和には,核周りの電荷分布非対称に起因する四重極相互作用も影響し,これは歪によって制御できることが知られている。ここでは,主に位相情報保持時間の延長を目的に,四重極相互作用のコヒーレンス時間への影響を調査した。まず,極低温で試料に任意歪を加えることができる機構を作製し,四重極相互作用の制御を可能にした。次に,この機構を利用して歪量を変えながらコヒーレンス時間の測定を行った。本実験では,歪量を大きくし,四重極相互作用の効果を増大させることで,コヒーレンス時間が延長されるという結果が得られた。上述のように,本年度の研究では核スピンコヒーレンス制御に関して多くの知見が得られた。
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