2009 Fiscal Year Annual Research Report
グレゴリオス・パラマスとビザンツ思想。ヘシカズムのロシアへの流れと展開。
Project/Area Number |
09J07876
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
袴田 玲 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ヘーシュカスム / グレゴリオス・パラマス / 『フィロカリア』 / 東方キリスト教 / 祈りの身体技法 / ロシア / ビザンツ / 宗教学 |
Research Abstract |
本年度の研究では、グレゴリオス・パラマス全集のなかでも、彼の主著『聖なる仕方で修行するヘーシュカストのための弁護』といった論争書だけでなく、『祈りについて』など、彼が身近な僧や説教のかたちで民衆に語った講話の読解も進み、その内容はもとより語り口の違いなどにも注目して考察をすることで、より多角的にパラマスという人物に迫ることができた。 また、パラマスが生きた14世紀ビザンツ以降のヘシカズムの歴史を追うという意図のもと、7月と9月の二度、それぞれ3週間ずつロシアへ調査旅行に渡った。その際には、ロシア正教最大の神学校を訪問し、その副長と会談してヘシカズムをめぐって意見交換をするとともに、当神学校に所蔵されていて普段は閲覧することのできない貴重な資料(イコンなど芸術品を含む)を見せてもらい、それを写真におさめて今後の学術研究に生かせるようにデータとして残すことができた。また、現在のロシアにおける生きた信仰を学ぶべく、教会の奉神礼に通い、信者と語り合い、また彼らの家庭を訪れて、その家族も含めて様々なインタビューに成功した。それらの証言をもとにした考察によって、ロシアの家庭における代々の信仰とその変容の様の一端をつぶさに追うことができた。 こうして、ビザンツ時代におけるキリスト教、その後のロシアへの流れ、さらにソ連邦の建設とその崩壊という経験をした現在のロシアにおけるキリスト教の在り方をまさに肌で感じ取り、それらについての考察を学会活動および講演会のかたちで広く学問世界に問うことができた。このことは、世界的にもまだ層の浅いビザンツおよびロシアのキリスト教研究にとって、少なからぬ影響をもつものと言える。
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Research Products
(7 results)