2010 Fiscal Year Annual Research Report
陸上地下圏メタン動態に関与する新規な嫌気呼吸未培養細菌の探索と分離培養
Project/Area Number |
09J07884
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
堀 知行 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 特別研究員(PD)
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Keywords | 陸上土壌圏 / 分子生態学的手法 / メタン生成アーキア / 真核微生物 / 鉄還元細菌 / 還元的酢酸生成菌 / 結晶性酸化鉄 / 共生培養法 |
Research Abstract |
近年、分子生態学的手法や安定同位体追跡技術を組み合わせることで、未知環境微生物の役割と分布が明らかになりつつある。我々はこれまでにメタン産生抑制に関わる新規な微生物群(結晶性酸化鉄還元細菌など)を同定してきた。本研究では、これらの実体が未だに明らかでない中核的微生物群を分子生態学的手法によって探索し、さらに独自の分離培養法を用いることでそれらの微生物集積系を取得することを目的とした。本年度は、陸上土壌圏において嫌気呼吸能(硝酸・硫酸・鉄還元能)を持つ未知真核微生物の探索を行った。有機酸混合物を電子供与体および上記の各種無機酸化物を電子受容体として用い、水田または森林土壌を嫌気的に培養した。その結果、水田土壌の酸化物添加区において著しい有機酸分解とガス生成抑制が観察され、一方で森林土壌の酸化物添加区では有機酸分解が比較的緩やかであった。培養土壌から全RNAを抽出し、18SrRNAを標的としたRf-PCR解析を行ったところ、水田土壌の鉄添加区、森林土壌の硝酸・鉄添加区で遺伝子発現が観察された。これらの事象は、嫌気土壌で新規な真核微生物群が嫌気呼吸代謝に関与していることを強く示唆するものである。現在、18S rRNAの遺伝子配列解読やメタトランスクリプトーム解析を進めている。上述の分子生態学的研究に加え、土壌圏において酢酸利用性メタン生成菌と基質競合関係にある鉄還元細菌の分離培養実験を行った。具体的には、湿原・水田・森林土壌、海底コアを微生物接種源として、結晶性酸化鉄(Goethite, Lepidocrocite, Hematite, Magnetite)を電子受容体に用いた集積培養を開始した。現在までのところ、特に水田および森林土壌を接種源とした培養試験において、結晶性酸化鉄を還元する集積培養系が得られている。今後、これらの鉄還元細菌を純粋分離すべく培養試験を継続してゆく。また水素利用性メタン生成菌と基質競合する水素高親和性の還元的酢酸生成菌を集積するために、湿原・水田・油田土壌、メタン発酵汚泥を接種源とした新規な共生培養実験をスタートさせた。現在までに、油田および水田土壌において微生物共生凝集体を得る事に成功しており、こちらも純粋な二者培養系の構築を進めている。
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Research Products
(7 results)