2009 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀後半フランス・レアリスム文学における女性の身体表象-裸体と衣裳
Project/Area Number |
09J07891
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
高井 奈緒 Tokyo University of Foreign Studies, 大学院・総合国際学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 女性 / 小説 / 裸体 / 衣裳 / フロベール / ゴンクール兄弟 / ゾラ / 19世紀後半 |
Research Abstract |
申請者の研究目的は、フロベール、ゴンクール兄弟、ゾラの小説における女性の「裸体」と「衣裳」、そして「裸体と衣裳が相互に浸透しているような」表象を、19世紀後半当時の歴史・社会的な文脈も踏まえて考察し、女性の身体がどのように感知され「視覚化」されているか、そして、そこにどのような時代の精神や、作家の意図や心理が反映されているかを明らかにすることである。 本年度は、ほぼ研究計画通り「裸体」と「衣裳」に関する考察を終えることが出来た。 「裸体」の考察では、作家が自己を投影した画家の物語を通じて、「肉体」を描き表そうと必死の努力をする姿が浮かび上がった。しかし、女性の「肉体」のもつ強烈な魅力の前にその意思は挫かれ、官能的な緊張が頂点に達した瞬間、その身体は白く硬い彫像的なイメージで描かれる。ここに「肉体」を描き出そうという作家の意図の限界が表れていると考えられる。 一方「衣裳」の考察では、女性の身体が男性の視線によって徹底的に対象化され、本来の自己から病的に乖離していく様子が多く描かれることが分かった。女性の裸体の表象が最終的に彫像的なイメージに行き着くのに対し、女性の身体と衣裳との関係を象徴するイメージは、身体の一部がもがれたマネキン人形のうちに読み取ることが出来た。 本研究の意義は、異なる作家の作品から結果的に共通する女性の身体のイメージが浮かび上がったこと、そして「裸体」と「衣裳」で、女性の身体が対照的なイメージで表されると分かったことである。 また当時の社会で女性の白い衣裳が帯びていた象徴的記号と、ゾラがそれを利用し与えたアイロニカルな意味を明らかにした雑誌論文が、自然主義文学を専門とするフランスの研究誌「カイエ・ナチュラリスト」に掲載が決定したことも大きな研究の成果であり、本研究における考察の深さと新たな視点を証明している。
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Research Products
(1 results)