2009 Fiscal Year Annual Research Report
多点同時観測衛星と数値計算を用いた地球磁気圏尾部の高速流の研究
Project/Area Number |
09J07898
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井筒 智彦 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 地球磁気圏 / プラズマ輸送 / THEMIS / 運動論的アルフヴェン波 |
Research Abstract |
本年度は,多点同時観測衛星のデータを用いて,地球磁気圏内におけるプラズマ輸送機構の調査を遂行した.プラズマ輸送機構の解明は,磁気圏の形成という磁気圏物理の根本的な問題であるだけでなく,無衝突プラズマの輸送という宇宙プラズマ物理の観点からも重要な問題である. まず,地球磁気圏尾部から静止軌道へのMHDスケールの大規模なプラズマ輸送における高速流の寄与について,GeotailとLANL衛星を用いて統計的に調査した.惑星間空間磁場が長時間北向きで磁気圏内に太陽風起源の高密度プラズマが豊富にある場合,尾部の高速流は約40%の確率で静止軌道まで高密度プラズマを輸送することを明らかにした.さらに,高速流が静止軌道上での高密度プラズマ出現の約30%に起因していることも示した.磁気圏尾部におけるプラズマ輸送機構としての高速流の寄与を多点観測の統計解析から明らかにしたのは本研究が初めてである. 続いて,THEMIS衛星を用いて,イオンスケールのプラズマ輸送の詳細な物理過程を調査した.ある事象について,断熱輸送だけでは説明がつかず拡散による輸送が実現していることをプラズマ粒子分布関数の多点観測から初めて明らかにした.また,波動データの解析と準線形理論を基に,プラズマと運動論的アルフヴェン波の波動粒子相互作用による拡散が輸送に寄与していることを明らかにした.さらに,電磁流体的な渦構造中の境界で運動論的アルフヴェン波が生じ,全体で大規模な輸送を実現する,というシナリオが有り得ることを示し,磁気圏プラズマ輸送の普遍性に関する新たな問題意識を提起した.
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Research Products
(3 results)