2010 Fiscal Year Annual Research Report
多点同時観測衛星と数値計算を用いた地球磁気圏尾部の高速流の研究
Project/Area Number |
09J07898
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井筒 智彦 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 地球磁気圏 / プラズマ輸送 / 運動論的アルヴェン波 / 波動粒子相互作用 / 分布関数 |
Research Abstract |
本研究では,多点同時観測衛星のデータ解析による観測的アプローチと数値計算による理論的アプローチにより,宇宙空間におけるプラズマの輸送機構を理解することを目的としている.プラズマ輸送の問題は,「磁気圏がいかにして形成されるか」という磁気圏物理の根本的な問題であるだけでなく,「無衝突プラズマではいかなる輸送機構が実現しているか」というプラズマ物理の観点からも重要な問題である.本年度は,運動論的アルヴェン波によるプラズマ輸送の理解を目指して研究を遂行した.まず,思考実験とテスト粒子計算から,この波によるプラズマ輸送の理論を構築した.運動論的アルヴェン波の中では,磁場方向に波と並走する粒子が波から一定の方向の力を受け続けドリフト運動をしながら磁場垂直方向へ輸送されることを示した.輸送が起こるためには磁場垂直方向の速度(ジャイロ半径)が波の垂直波長に関連した制約条件を満たす必要があることも示した.さらに,プラズマベータが1のオーダーの場合,ランダウ減衰をもたらす平行電場よりもトランジットタイム減衰をもたらす圧縮性磁場の方がより輸送に寄与することを明らかにした. 続いて,磁気圏境界面付近のプラズマ分布関数データの事象解析から運動論的アルヴェン波による輸送の観測的検証を行った.粒子の供給源となるマグネトシースのプラズマと磁気圏内に存在するシース起源のプラズマの分布関数を比較し,速度空間での輸送効率を求めた.その結果,輸送効率には異方性があり,運動論的アルヴェン波による選択的輸送の描像と非常によく一致することを示した.このことから,解析した事象に於いてはマグネトシースプラズマが運動論的アルヴェン波によって磁気圏内へ輸送されたと結論づけた.プラズマ波動によるプラズマの実空間輸送を粒子分布関数から実証したのは世界初の成果である.
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Research Products
(3 results)