2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J07945
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金澤 拓也 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | QCD / カイラル対称性の破れ / カイラル摂動論 / 有限密度 / カイラルランダム行列理論 / スペクトル和則 |
Research Abstract |
有限温度密度QCD(量子色力学)は初期宇宙や中性子星の内部構造、重イオン衝突等の幅広い物理に応用を持つが、有限バリオン数密度では格子ゲージ理論の数値シミュレーションが困難となるため今も十分には理解されていない。しかしカラーの数を3から2に変えると、新しい対称性が存在して格子シミュレーションが有限密度においても可能となる。本研究ではこのケース(two-color QCD)を現実のQCDに対する貴重なトイ・モデルとみなして、理論的な研究を行った。(1)まず高密度極限におけるカイラル対称性の自発的な破れのパターンを決定し、南部ゴールドストーン(NG)場の有効ラグランジアンを導いた。(2)次に、有限体積の系を考え、NG場のゼロ・モードの寄与のみによって分配関数が記述できるε-regimeが高密度極限においても存在することを指摘し、有限体積系の分配関数のクォーク質量依存性を解析的に求めた。(3)この結果を分配関数のスペクトル表示と比較することにより、ディラック演算子の固有値が満たすべきスペクトル和則を導いた。(4)この和則に基づき、microscopic spectral correlation functionを定義し、それを与えるカイラルランダム行列理論が存在すること予想し、(5)実際に新しい非エルミートカイラルランダム行列を導入して、そのラージサイズ極限がtwo-color QCDの高密度での有効ラグランジアンの微分を含まない部分と一致することを解析的に証明した。この結果は、強い非エルミート性を持ったランダム行列理論の、QCDへの最初の応用例であると同時に、高密度におけるディラック演算子の固有値分布に関する最初の解析的な結果である。これらの結果は原理的には将来の格子シミュレーションにより確認できると期待される。
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Research Products
(9 results)