2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J08014
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
岡本 丈典 National Astronomical Observatory of Japan, ひので科学プロジェクト, 特別研究員PD
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Keywords | プロミネンス / cavity / 浮上磁場 / 太陽観測衛星ひので |
Research Abstract |
本年度は、太陽観測衛星「ひので」によって捉えられた、太陽静穏領域での特異な活動現象についての解析を中心に行った。2006年12月23日の「ひので」搭載の可視光望遠鏡(SOT)の観測から、北西の太陽縁付近にて柱状の低温物質の塊がゆっくりと鉛直上方に伸びる現象が見つかった。2時間以上に続いたこの現象により、高度の低いプロミネンスが形成された。この柱状構造全体の上昇速度は2km/sである一方、内部はより細かい低温プラズマの集合体であり、個々のプラズマは最大20km/sで上昇運動していることがわかった。また、この現象に伴い、「ひので」のX線望遠鏡と観測衛星「STEREO」の極紫外線望遠鏡では、プロミネンス上空のcavity内での活動現象が捉えられている。既存のcavityの他に、太陽下層から黒い塊が上昇し、既存のcavityと衝突・合体したような動きが観測された。これらの観測現象を包括的に説明するために、光球下からの螺旋磁場の浮上が必要であると結論づけた。螺旋磁場の浮上に伴って、その磁場とコロナ中の既存磁場との間で連続的に磁気リコネクションが発生、彩層の低温物質がコロナ中へと持ち上げられる。これがSOTで観測された柱状構造内部の微細構造の高速上昇運動に対応する。リコネクションせずに残った浮上磁場の一部はそのまま上昇を続け、低密度のコロナ中で膨張し、上昇も加速する。これがX線や極紫外線で観測されたcavityの上昇運動に対応する。その後、既存のcavityの高度に到達した浮上磁場は磁気リコネクションを起こし、観測されたような合体をもたらす。この過程は、これまで謎とされてきたプロミネンス-cavityシステムの進化・維持のメカニズムの解明につながる初の観測結果である。
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