2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J08078
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北條 元 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | スピントロニクス / X線吸収端近傍構造 / X線磁気円二色性 |
Research Abstract |
イルメナイト(FeTiO3)およびヘマタイト(Fe2O3)は両者とも反強磁性を示す絶縁体であるが、これらの固溶体はフェリ磁性を示す半導体であることが知られており、スピントロニクス材料として近年注目を集めている。フェリ磁性および電気伝導性は、これまでFeTiO3およびFe2O3中のFeの価数がそれぞれ2価および3価であり、Tiの価数は4+であるという単純なイオンモデルによって説明されてきた。しかしながら近年FeTiO3中のTiの価数は単純な4価ではないことが示唆されており、固溶体にも単純なイオンモデルは適応できない可能性がある。そこで本研究では固溶体の電子および磁気構造を明らかにすることを目的として、FeおよびTiのL吸収端において、X線吸収端近傍構造(XANESS)とX線磁気円二色性(XMCD)スペクトルを測定した。 FeのL端のXANESスペクトルからFe2+とFe3+が混合した状態であることが確認された。興味深いことにXMCDスペクトルはFe2+に帰属されるピーク位置からのみ生じていることが明らかとなった。このことはFe3+の磁化は打ち消しあい、Fe2+のみが磁性に寄与しているという従来のモデルを支持する結果である。またSUMルールを適用することで、Fe2+はc面内に大きな軌道磁気モーメントを有していることが明らかとなった。 TiのL端のXANESスペクトルは典型的なTi4+のものであり、固溶体中のTiの価数は主に4価であることが明らかとなった。しかしながら、XMCDスペクトルにはシグナルが見られ、このことはTiのd軌道に電子が存在し、それが磁気的に分極していることを示唆している。
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Research Products
(6 results)