2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J08078
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北條 元 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 透過型電子顕微鏡 / 高角度環状暗視野 / 環状暗視野 / CeO2 / 粒界 |
Research Abstract |
酸化物セラミックス多結晶体の種々の特性は、粒界を始めとする結晶欠陥の存在により大きく影響を受ける。そのため材料の特性を本質的に理解するためには、結晶欠陥領域における酸素原子を含めた原子構造を明らかにする必要がある。このような結晶欠陥の構造を調べる手法として透過型電子顕微鏡(TEM)が広く用いられているが、軽元素を直接観察することは困難であるため、酸素副格子に関する知見はほとんど得られていない。そこで高角度環状暗視野(HAADF)法と、近年開発された環状暗視野(ABF)法を用いて、イオン伝導体および触媒として注目を集めているCeO2の結晶粒界におけるCeおよび酸素副格子の構造決定を試みた。TEM観察用試料は(210)Σ5粒界を含んだYSZバイクリスタル上にPLD法により作製したCeO2薄膜を、Arイオンミリングにより薄片化することで作製した。HAADF像では輝点の位置からCe原子の副格子に関する情報は得られるが、酸素原子カラムに対応するコントラストは観察されない。一方でABF像において酸素原子カラムは灰色のコントラストとして明瞭に観察できる。HAADF像とABF像を組み合わせることで、粒界コア領域におけるCeおよび酸素原子カラムの位置を特定することに成功した。理論計算により求めた安定な粒界構造およびその構造から得られたシミュレーション像は、実験像とよく一致しており、粒界コアに見られるコントラストは酸素原子に起因すると結論付けられた。このように結晶欠陥領域における酸素を含めた全構成元素の副格子を明らかにすることで、酸化物中結晶欠陥の本質を理解する路が拓かれた。
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Research Products
(6 results)