2010 Fiscal Year Annual Research Report
オンサイト分析による古代エジプトにおける青色顔料の変遷についての考古化学的研究
Project/Area Number |
09J08080
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
阿部 善也 東京理科大学, 総合化学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 考古化学 / オンサイト分析 / コバルト・ブルー / 古代エジプト / 中近東地域 / 放射光応用 / 装置開発 |
Research Abstract |
本研究の目的は古代中近東地域で使われたコバルト着色剤に着目し,可搬型分析装置による非破壊オンサイト分析を柱に化学的な特性化を行い,その利用の推移と分布を解明することである。平成22年度の調査では,エジプト新王国時代のコバルト着色ガラス・ファイアンスを集中的に研究した。その結果,エジプトのダハシュール北遺跡,アブ・シール南丘陵遺跡という2箇所の遺跡において,これまでに未発見のコバルト着色剤が使われていたことが明らかとなった。この新発見のコバルト着色剤は新王国時代のなかでも第19~20王朝(前12~10C)に使われたものであり,従来説ではこの時代のエジプトではコバルト着色剤は使用されていなかったとされていた。よって今回見つかったこのコバルト着色剤は,これまでの通説を覆し,新王国時代における技術変遷を考えるうえでも重要な発見といえる。またこれらの遺跡から出土した遺跡からは同時に大量のガラス製品が出土しており,これらのガラスは特異的なアルカリ組成を有していた。第18王朝(前15~12C)のエジプトで開始されたガラス生産は,第19~20王朝には規模が縮小されたと考えられてきた。しかし今回特異的な組成を持つガラス製品が大量に出士したことにより,これまで認識されていない新たなガラス生産・輸入体系が第19~20王朝のエジプトに存在していた可能性が示されることとなった。こうしたコバルト着色剤に関する研究のほかに,可搬型装置の新規開発および文化財資料研究への応用を進めている。平成21年度より進めてきた「国宝 紅白梅図屏風(MOA美術館)」の研究について学会で発表し,ポスター賞を受賞した。
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Research Products
(8 results)