2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本海軍の対応を中心とした太平洋戦争における海上交通保護問題の研究
Project/Area Number |
09J08091
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
坂口 太助 日本大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 近現代史 / 日本 / 日本海軍 / 太平洋戦争 / 海上交通保護 / 総力戦 |
Research Abstract |
両大戦間期及び太平洋戦争前半期については既に検討を行ったため、本年度は残りの期間となる太平洋戦争後半期について検討を行った。従来、海上交通保護問題は海軍に注目した軍事史の観点からの研究が多かったが、本研究では海軍のみならず政府や陸軍も視野に入れ、「日本としての認識・対応」という点に注目した。 海軍は、1944(昭和19)年8月には海上交通保護専門部隊「海上護衛総司令部」を決戦部隊「連合艦隊」の指揮下に編入するなど、一見すれば海上交通保護を軽視したかのような対応を行い先行研究でも批判されている。しかし、それに先立つ同年7月のマリアナ諸島失陥に伴い、政府・陸海軍間に、このままではフィリピン・台湾・沖縄なども失い、戦域は本土周辺に圧迫され海上交通も遮断されるとの認識(危機感)が共有されるようになっていた。海軍の対応は、海上交通そのものを維持するためにもフィリピン等の防衛が重要であるという、日本としての戦争指導上の基本方針に基づくものであったといえ、必ずしも海上交通保護を軽視していたわけではなく、一定の対応を行っていたと評価することが可能である。むしろ、戦前の日本においては陸海軍それぞれの独立性が高く(「統師権の独立」)、政府・陸海軍の三者で基本的な認識・方針を確認する場はあってもその先の具体策は海軍に委ねざるを得ず、日本の総力を挙げて具体的な対応を策定・実行できなかったことが問題であったといえ、このことが海上交通保護に「失敗」した大きな要因と見ることができる。 海上交通保護問題は、確かに直接の当事者は海軍ではあるが、日本全体にかかわる問題である。そのため、軍事史の枠に閉じ込めることなく、広く歴史学(日本史)全体の問題として検討することが重要であると指摘でき、またそのような観点から検討を行ったことに本研究の意義があるといえる。
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Research Products
(3 results)