2009 Fiscal Year Annual Research Report
日本海軍の対応を中心とした太平洋戦争における海上交通保護問題の研究
Project/Area Number |
09J08091
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
坂口 太助 Nihon University, 文理学部, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 近現代史 / 日本 / 日本海軍 / 太平洋戦争 / 海上交通保護 / 総力戦 |
Research Abstract |
昨年度までは、戦間期における日本海軍の「戦時における資源入手・海上交通保護」という問題に対する認識と、太平洋戦争前半期における実際の対応を検討した。本年度は戦間期、特に昭和初期における日本の政府・一般社会の本問題に対する認識と、海軍の認識との関係(一致、相違など)や問題点の検討を目指した。 当初は造船助成政策に注目し、船舶問題を軸としての検討を目指したが、調査の過程で船舶の問題よりも資源入手の問題を論じた資史料がより多いことが明らかとなり、この点を軸として検討を行った。政府の認識は、主に一九二七(昭和二)年設立の「資源局」に関する資史料及び諸研究から、一般社会の認識は、その声を一定程度代弁する存在としての衆議院に注目し主に海軍と議員間の様々な質疑応答から検討を行った。戦間期の海軍は、中国大陸の資源を重視する立場から本土周辺海域のみの海上交通保護を行うとの認識を有しており、こうした認識は海軍の発行する雑誌などで外部にも表明されていた。そして政府や議員の問でも、戦時には主に中国大陸の資源を活用して経済を維持するということは共通の認識であり、海軍に対する批判は特には見られず、基本的には一致していたことが明らかとなった。ただし戦前の日本では政府・議会からの軍の独立性が高く、総論での認識の一致はあったものの、具体的な海上交通保護策については海軍に任せるほかなかったなどの問題点があった。 第一次世界大戦後、日本でも「総力戦」への備えが標榜されてはいたが、制度的な問題から国の「総力」を挙げて準備を行うことが困難であったのであり、またこうした点が太平洋戦争において海上交通が破綻するに至った一因となったと指摘しうる。本研究は、海軍史・政治史・経済史等各分野の研究成果を合わせ、海軍のみにとどまらず日本としての海上交通保護問題に対する認識やその問題点を検討したところに意義があると言える。
|
Research Products
(2 results)