2009 Fiscal Year Annual Research Report
遺跡出土木製品の年輪炭素14と同位体元素からの自然環境因子による縄文海進期の探索
Project/Area Number |
09J08134
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
佐藤 太一 Yamagata University, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 炭素14年代 / 押出遺跡 / 縄文海進期 / 安定同位体 / 木柱試料 |
Research Abstract |
本研究は、縄文海進期(縄文前期)の遺跡から出土した木柱等の年輪中C14濃度および安定同位体比を高精度の物理的測定法により測定して自然環境の視点から古代日本の環境変化を探索することを目的としている。そこで、縄文海進期の環境の影響を受けていると考えられる押出遺跡から出土した複数の木柱を試料として、その年代と安定同位体を測定することを計画した。山形県埋蔵文化財センターの調査は、多数の住居跡とそれらの住居群を分割する二つの溝状の窪地を示している。また、それぞれの住居跡からは住居に使用されたとされる多数の木柱が出土している。そこで、住居群の年代分布を調べることで居住区域の時間変動と環境の変化との関連を探索することを計画した。今年度は、山形県埋蔵文化財センターの協力の下、出土した大量の木柱から研究に適した木柱の選定を行った。その中からまずは、予備実験として別々の住居から出土した2つの木柱のC14年代測定を行った。その結果は、山形県埋蔵文化財センターの報告結果の範囲に収っており、さらに従来に比べ高精度の測定が可能であることがわかった。一方、2007年7月16日に発生した中越沖地震により、出雲崎沖の海底に大量の古木が出土した。その中から15個体の海底古木のC14年代測定を行い、年代分布を調べた。その結果、測定した海底古木の多くが縄文海進期のものであることがわかった。この年代分布は、押出試料の年代分布と比較する上で重要である。また、縄文海進期の環境変化を調べるための比較試料として、最終氷期である2万6千年前および弥生前期と考えられる2千5百年前の古木年輪試料を選び、それらの酸素同位体(δ^<18>O)のテスト測定を行った。その結果、最終氷期の値が明らかに弥生前期の値より低い値を示し、最終氷期が寒冷・乾燥であったことをよく表す結果を示した。このように、酸素安定同位体(δ^<18>O)を測定することで気候変動の探索が可能であることがわかった。
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Research Products
(11 results)