2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J08205
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
柳村 裕 東京外国語大学, 大学院・総合国際学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 声調 / ラオ語 / 音声学 / 音韻論 |
Research Abstract |
ラオ語の声調に関する3つの調査・研究を実施し、ラオ語の声調を音声的、歴史的、および音韻的側面から考察した。まず、音声的側面から、発話速度を操作による曲線声調の音響的変数の変動を観察し、より安定して実現される特徴は何かを調査した。その結果、ラオ語の曲線声調の音声実現において比較的安定して観察されるといえる特徴は、FO変化の両端の時間的配置とFO変化の傾きであると解釈した。 次に、歴史的側面の調査として、ラオ語の11方言変種の声調体系を記述し、方言間で比較することで、ラオ語の声調に生じたと推定される音変化の仮説を設定するための議論を行った。提案された仮説の中で、ラオ語の声調の音韻的考察(後述)との関わりにおいて最も重要なものは、レジスターの変化、すなわち曲線声調がその形状を変えずに全体の高さのみを変化させるという過程である。 以上の調査結果に基づき、ラオ語の声調の音韻構造について考察し、声調を構成するより小さな音韻的単位である声調素性(tonal feature)の導入が有効であることを示した。そこで提案された声調素性体系の概要は以下の通りである。まず、声調素性を用いた高さの区別に関して、話者の声域を大きく2分割する「レジスター素性(register feature)」を導入し、4段階の高さの区別する体系が有効であることを示した。次に、ラオ語の曲線声調の表示方法および声調内部の素性構造(feature geometry)の表示方法に関して、曲線声調を2つの水平声調の連続であると解釈し、その2つの水平声調の両方を支配する"tonal node"を導入することで、曲線声調が水平声調の連続であると同時にそれ自体で単一の構造体をなすという表示方法を提案した。以上の音韻構造を想定することによって、ラオ語の声調の音声的および歴史的側面に関する上で述べた2つの調査の結果が容易に説明可能であることを示した。
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Research Products
(1 results)