2009 Fiscal Year Annual Research Report
抑うつ者にみられる思考抑制の失敗のメカニズムと介入方略の検討
Project/Area Number |
09J08248
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
服部 陽介 Nagoya University, 環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 抑うつ / 思考抑制 / 焦点化方略 |
Research Abstract |
平成21年度は,抑うつ者にみられる,ネガティブな事象についての思考抑制の失敗の背景に存在すると考えられる認知プロセスを明らかにすることを目的として,思考抑制時に用いられる方略のひとつである焦点化方略の機能に注目し,実験的検討を行った。 実験においては,先行研究で明確に分離されていなかった,焦点化方略に対する認知と焦点化方略の実行という二つの段階を分離することで,特に方略を実行する段階における障害が,抑うつ者の思考抑制の失敗の原因の一つとなっている可能性についての検討を行った。その結果,抑うつ者は,焦点化方略を用いて思考抑制を行った場合に,非抑うつ者よりも多くのネガティブな侵入思考を経験することが示された。しかしながら,予測に反し,抑うつ者も非抑うつ者と同程度に,焦点化方略を実行することができることが明らかになった。これらの結果は,一般的に有効な思考抑制方略であると考えられてきた焦点化方略が,抑うつ者においては適切に機能していないことを示している。この知見から,抑うつ者のネガティブな思考抑制の失敗について治療的な介入を行う上で,焦点化方略についての信念体系の修正や,焦点化方略の実行を促進する注意機能への介入を行うだけでは,十分な治療効果が得られない可能性が示唆された。十分な治療効果を得るためには,複数の介入法を併用した多角的なアプローチが必要であると考えられる。この知見に基づき,抑うつ者の焦点化方略の機能低下を導く要因についての検討を行いながら,複数の手法を用いた最適な介入方略の検討にも力を入れていく必要がある。
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Research Products
(3 results)