2009 Fiscal Year Annual Research Report
ポスト注意における視覚表象に関する認知心理学的研究
Project/Area Number |
09J08272
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中島 亮一 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 変化の見落とし / 変化検出 / フリッカー法 / ポスト注意 / 視覚表象 / 情景知覚 |
Research Abstract |
情景知覚において、ポスト注意段階(注意から解放された段階)における表象がどのように形成されるかについては、視覚的注意に基づく理論、記憶に基づく理論において異なる説明がなされている。前者においては、ポスト注意段階の表象は脆弱であり、後者においては、頑健な表象が記憶に保持されていると主張されている。これらの主張は、一見排他的のように考えられてきた。本研究では、その矛盾が、互いの理論が基盤としている実験課題の違い(前者は、情景中で起こっている変化を明示的に同定させる一方で、後者は、再認課題に答えさせるという課題を行っている)に由来するのではないかという仮説を立て、それを検証した。具体的には、注意の理論が基盤としているフリッカー変化検出課題(一部の異なる情景画像を交互にブランク時間を挟んで呈示し、変化を検出させる課題)に、記憶の理論が基盤としている記憶課題を付加した実験を行い、フリッカー変化検出課題におけるポスト注意の表象について検討を行った。その結果、フリッカー変化検出課題においても、ポスト注意の表象は保持され続けるということが明らかになった。しかしながら、その表象は、情景中に起こる変化の明示的な同定にはほとんど役に立たず、再認課題には答えられる程度の強度を持っているということも明らかになった。よって、注意の理論が主張している表象は、情景中に起こる変化を明示的に同定することができるものである一方、記憶の理論が主張している表象は、記憶テストを行われればそれに答えられる程度のものであるということが示唆された。すなわち、互いに矛盾すると考えられている二つの理論による説明は、それぞれ表象の異なる側面を説明しており、両立可能であるということが示された。
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