2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J08322
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
澤木 佑介 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 南中国三峡地域 / ストロンチウム同位体比 / エディアカラ紀 |
Research Abstract |
原生代後期からカンブリア紀までにおける化石の研究から、生命は6億3千万年前から5億3千万年前(エディアカラ紀~カンブリア紀)に急激に進化・多様化した事が知られている。この生命の爆発的進化を起こした原因について同位体地球科学の立場から解明が試みられている。 生命の急激な進化には、当時生命が存在していた海洋の組成の変化が密接に関連していた事が予測される。海洋の組成変動と生命の急激な進化の関連性と原因の解明は、科学において極めて重要なテーマであり、急務となっている。海洋の組成は河川水などによる大陸地殻物質の流入と、海嶺における熱水循環活動によるマントルからの流入のバランスによって支配されている。この2つのフラックスの流入比変動は、海洋で堆積した炭酸塩岩中の放射性起源ストロンチウム同位体比(Sr同位体比)を測定する事により定量的に推定する事が可能である。私は海洋の組成変動を炭酸塩岩のSr同位体比変動から読み取ろうと試みた。 私の研究により、エディアカラ紀~カンブリア紀について、先行研究よりも連続的かつ高時空分解能なSr同位体比変動を得る事ができた。その結果、原生代後期にはSr同位体比が二度急激に増減し、特に2度目のSr同位体比の上昇は数多くの化石が産出し始める時期と同時であった。 重要な事は、大陸地殻物質の流入増加(Sr同位体比の増加)がこれらの生命進化と同時に起こっている事である。リンやカルシウムといった生命にとっての栄養塩は大陸地殻が削剥される事により海洋にもたらされる。申請者の結果から、大陸地殻物質の流入増加が海洋にリンやカルシウムを大量にもたらし、後期原生代の生命進化に重大な影響を与えた事が初めて定量的に示された(Sawaki et al., 2010 ; Precambrian Research)。
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