2009 Fiscal Year Annual Research Report
重力波を用いた原始ブラックホールの新しい検証方法の研究
Project/Area Number |
09J08381
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 遼 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 原始ブラックホール / 重力波 / 暗黒物質 |
Research Abstract |
原始ブラックホールは、宇宙初期にインフレーションなどの機構によって生み出された初期密度揺らぎが、重力崩壊を起こすことによって形成されるブラックホールである。原始ブラックホールは形成時期によって幅広い範囲の質量を持つことが可能であり、いまだその起源のわかっていない中間質量ブラックホールや暗黒物質などの起源の候補のひとつである。原始ブラックホールの存在量に関しては様々な制限が現在までに知られている。しかし、原始ブラックホールが前記の天体の候補であることを否定するまでには至っていない。本研究では原始ブラックホールに伴う大きな振幅を持つ初期密度揺らぎから生成される重力波を評価することによって、現在・将来の重力波観測によって原始ブラックホールの存在量に対して厳しい制限を課すことができることを明らかにした。特に我が国で計画されているDECIGOをはじめとする宇宙重力波干渉計を用いることで、原始ブラックホールによって暗黒物質を説明可能か否かを判断することができることを示した。また、生成された重力波はその源である初期密度揺らぎの特徴を反映しているため、重力波観測によって初期密度揺らぎの生成機構に対する示唆を与えることも可能である。初期密度揺らぎは宇宙の極初期に生成されるものであり、その生成機構を知ることはインフレーションなどの高エネルギー領域における物理の解明にもつながる。本研究の成果は、このように重力波観測が暗黒物質やインフレーションなどの宇宙論における問題に迫る有用な手段となることを示すものであり、宇宙論だけでなく重力波観測にとっても重要な成果であると言える。
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Research Products
(6 results)