2011 Fiscal Year Annual Research Report
ダークバリオン探査に向けた高性能X線分光検出器の開発と観測的研究
Project/Area Number |
09J08405
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉武 宏 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | X線天文 / 高エネルギー宇宙物理 / 太陽風 / 星間空間 |
Research Abstract |
本年度はダークバリオンの将来探査に向け、現行のX線天文衛星「すざく」を利用して軟X線背景放射(Soft X-ray Diffuse Background:SXDB)の起源解明に迫った。ダークバリオンの候補である中高温銀河間物質からのプラズマ放射は、SXDBの起源と考えられている銀河系内のプラズマ放射や銀河系外の点源の重ね合わせに比べて、強度が1/100程度と非常に弱い。従ってSXDBの起源を理解することは、ダークバリオンを同定する上で必須となる。本研究はまず、太陽圏内の星間物質と太陽風の高電離イオンの電荷交換反応(Heliospheric Solar-wind charge Exchange:H-SWCX)に伴う輝線放射の存在を観測的に明らかにした。これは、2010年度に著者をPIとして行われた分子雲MBM16方向の複数回観測を利用している。年周視差による「すざく」の視線方向とHe Focusing Coneの相対的な配置の違いから、「すざく」の視線がConeを貫く場合にOVII輝線(0.57keV)の強度増光を検出した。また、反銀河方向の銀径120°から240°の57領域を対象として、「すざく」のアーカイブデータを系統系に解析し、明るい点源を除いた空間のOVII輝線の強度分布を系統系に導出した。酸素輝線の強度は銀緯に相関を示し、中性物質によるX線吸収が大きい低銀緯の視線方向は、H-SWCXのシミュレーションが予測するOVII輝線強度とコンシステントな結果を得た。従ってSXDBの起源として、近傍の放射は太陽圏内のH-SWCXに由来し、遠方は中性物質の向こう側に存在する広がった放射成分の寄与を示唆している。この遠方成分の描像は、従来より議論されてきた銀河系ハローのプラズマ放射を矛盾無く説明している。
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Research Products
(3 results)