2009 Fiscal Year Annual Research Report
ダークバリオン探査に向けた高性能X線分光検出器の開発と観測的研究
Project/Area Number |
09J08405
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉武 宏 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | X線検出器 / X線天文 / 高エネルギー宇宙物理 / 太陽風 / 星間空間 |
Research Abstract |
本研究の目的は、中高温銀河間物質(WHIM ; Warm Hot Intergalactic Medium)の空間分布を観測的に同定し、宇宙大規模構造とバリオン物質の熱的な進化過程を解明することである。だがWHIMの輝線放射は前景に存在する銀河系の放射に比べて1/100程度と弱く、そのため現行のCCD検出器で直接検出を狙うのは難しい。一方、銀河系内の放射を探ることは十分可能なアプローチであり、将来のWHIM観測に向けて系内放射の定量的な理解を得ておくことは必須である。 本年度は銀河系内の放射成分のうち、太陽風イオンと星間空間の中性元素による太陽風電荷交換反応(SWCX ; Solar Wind Charge Exchange)のOVII輝線放射についてその時間変動成分を探った。SWCX輝線はその微細構造が熱平衡プラズマと大きく異なるため、赤方偏移したWHIMからの信号と誤認しやすい。SWCXの輝線強度は(1)太陽活動に伴う12年周期変動と、(2)太陽圏内に存在する中性元素の非一様分布による年内変動が存在すると考えられている。そこで本研究では、まず(1)に対して、2006-2009年に行われたSuzaku衛星によるLockman Hole方向の年内同一点観測を利用し、太陽極小期に相当する2009年観測で1.5LU(=cts/s/cm2/str)のOVII輝線強度の減光を検出した。また(2)に対してはHe元素の太陽圏内集約構造(He Focusing Cone)によるOVII強度の変動が、地球の公転に伴う視差として現れるSuzakuのアーカイブデータを探し、3.0LUの増光を検出した。本来変動が存在しない同一方向の観測で、この様なSWCXによるOVII輝線の変動を観測的に得たのは本研究が初めてである。すなわち太陽圏内の輝線放射の理解が、X線で全天を見る上で必要不可欠であるという示唆を与えた。
|
Research Products
(4 results)