2010 Fiscal Year Annual Research Report
視覚詩とデジタル詩における言語性と造形性の関係の記号論的分析
Project/Area Number |
09J08408
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
水野 真紀子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 記号論 / メディア論 / 比較文学 / 認知言語学 / 国際研究者交流 / オーストリア;ドイツ;スイス / 視覚詩 / 文字論 |
Research Abstract |
前年度までの研究では、言語表現と造形表現(主に、絵や図などの視覚的表現)が視覚詩やデジタル詩の作品においてどのように組み合わされているのかを明らかにするために、両者の組み合わされ方を分析してきた。そして、視覚詩やデジタル詩などの20世紀以降の実験詩の作品では、言語表現と造形表現のそれぞれの意味ではなく、両者が組み合わされることによって新たに創出される意味が作品全体の意味として認知されていることを示してきた。これまでの研究で、組み合わせの効果を際立たせるために作家によって用いられる演出手法には二種類あることが明らかになっている。すなわち、それぞれのメディアの表現内容(言葉の意味と絵や図などの意味)を一致させるか、対比させるのだ。 今年度は、複数のメディア表現の組み合わせについて得られたこれまでの分析結果を応用し、視覚詩やデジタル詩の作品で重要な役割を果たす、別の種類の組み合わせの分析に取り組んだ。一つの作品内で作り手や文脈の異なる素材がどのように組み合わさるか、という素材の組み合わせの分析である。異なる出自を持つ素材の組み合わせとは創作活動一般に認められるもので、「引用」や「インターテクスト」といった芸術・文学の重要概念と接続する。今年度の研究では、複数の素材を組み合わせる場合にも、複数のメディア表現を組み合わせる場合と同様に、一致と対比という組み合わせ効果の二方向性が認められること、そしてその具体的な演出の方策は異なることを明らかにした。
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