2009 Fiscal Year Annual Research Report
高品質半導体量子細線・量子井戸レーザー中のキャリア分布と利得
Project/Area Number |
09J08412
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丸山 俊 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 半導体低次元構造 / 光物性 / 半導体レーザー / 顕微分光測定 / 励起子 / 準熱平衡分布 / 国際情報交換 / アメリカ |
Research Abstract |
非ドープ半導体量子細線・量子井戸中の光励起キャリアの分布または温度の状態を、光学スペクトルから解明することを目指し、格子温度・励起光強度などの測定条件によってそれがどのような変化を示すかを系統的に調査した。 まず当初の計画通り高品質な試料の作製を行った。共同研究者の協力も得て、本年度は非ドープGaAs/AlAs単一量子井戸を作製した。試料設計の工夫により、界面均一性に優れ、かつスペクトル構造の同定が明確に行える高品質試料を得ることに成功した。測定方法に関しては、従来の連続励起・反射配置の顕微光学系を、ピコ秒パルス励起・暗視野励起も行えるよう拡張した。併せて、検出器ノイズによるスペクトル誤差の見積もり、試料保持方法の改良による測定位置の再現性向上、発光スペクトルへの散乱光の寄与の評価の精密化などを通じ、発光励起(PLE)スペクトルの精度向上を実現した。キャリア温度導出のための解析プログラムの作成も行い、測定データ処理の効率化を図った。 上記の試料と測定系を用いて、顕微発光(PL)スペクトルおよび顕微PLEスペクトル測定を系統的に行い、得られた発光・吸収スペクトル形状からキャリア分布を調べた。その結果、全体としては、非ドープ量子井戸においてもドープ量子井戸と同様、光励起キャリアは準熱平衡状態となっており、温度T*(KMS関係式と光学スペクトルから求まる温度)は格子温度T_<env>(試料脇に設置したダイオード温度計の値)に近い値となることが明らかになった。併せて、励起子ピーク近傍の共鳴エネルギー領域で、特徴的な散乱光の増大がみられることを発見した。このような散乱増強効果は、PLEスペクトル形状と吸収スペクトル形状の間に違いを生じさせる可能性があるため、正しい吸収スペクトル形状を知るためにその特徴を詳しく知る必要があり、現在格子温度・励起光強度を変えた系統的測定を進めている。
|