2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J08453
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
田中 壮泰 Ritsumeikan University, 先端総合学術研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 比較文学 / ユダヤ / ジプシー / ポーランド / 文化 / 戦間期 / サブカルチャー / 第一次世界大戦 |
Research Abstract |
本研究はシュルツの提唱した概念「サブカルチャー」(podkultura)に注目したものであるが、09年度は作品読解を通じたその概念の詳細な考察よりも、まずはその背景にある、シュルツが置かれた当時の文化状況を探ることに集中した。論文「ユリアン・トゥーヴィムと戦間期--ポーランド、ユダヤ、ジプシー」で、シュルツと同じく同化ユダヤ人のポーランド語作家であり、当時のポーランド文学のみならず大衆文化全般を語る上でも無視することのできないユリアン・トゥーヴィムの創作活動を考察した。トゥーヴィムを考察することで、当時のユダヤ系作家が一枚岩的なものではないこと、ポーランドとユダヤ間のみならず、「ジプシー」の存在との間にも社会的、文化的、政治的に隣接した関係にあったという点を明らかにし、そうした状況の中で、シュルツも含めた戦間期のポーランドのユダヤ系作家の作品を読む必要性を述べた。 さらに当時のユダヤ系作家にとって、ドイツ語かポーランド語かイディッシュ語か、執筆言語に何語を選択するのかが重要な意味を持っていたが、シュルツのような大学教育を受けた知識人は通常、二重、三重言語使用者であった。19世紀末から、とりわけ20世紀初頭に、そのような曖昧な言語状況をナショナルな文化的配置に区画整備する作業が進み、それがもっとも劇的に現われたのが第一次世界大戦であった。シュルツが生きたガリツィアの言語、文化状況を歴史的に理解する上で、この地域全体を襲った戦争の経験は無視できない。こうした歴史的考察の経過をまとめたものとして、西スラヴ学会で「ガリツィアの戦争経験--ユーゼフ・ヴィトリン『地の塩』を中心に」と題する発表を行った。
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Research Products
(2 results)