2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本語母語話者と学習者の言語・非言語の聞き手行動と相違により生じうる誤解の分析
Project/Area Number |
09J08461
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
古川 智樹 関西大学, 国際部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 聞き手行動 / あいづち / 語用論的転移 / 中間言語 / 誤解 |
Research Abstract |
本研究では聞き手の行動(主にあいづち)に焦点を置き、日本語母語話者(以下JJ)、中国語母語話者(以下CC)、中国人・韓国人日本語学習者(以下JC、JK)がどのように会話の中で聞き手としての行動をしているのかを調べ、その違いがどのような誤解を引き起こしているかを分析した。 その結果、主に形式面の「あ系/そう系+か/へ系」のあいづちの使用にJJと学習者の間に違いが見られ、JCの「あ系」の使用は母語である中国語の「〓」の影響を受けた語用論的転移である可能性が高いこと、JCの「そう系+か」の誤用は中国語の「是〓」の影響による転移の可能性、またJKにも同様の誤用が見られることから学習段階における「中間言語的な言語使用」の特性の可能性の両方があること、JKのJJとは異なる「へ系」の使用はJK独自のものであり、特に「へ:+話題変換の質問」の場面では不自然な展開をさせていることがわかった。そして、聞き手行動の相違により生じうる誤解では、JJは学習者の反応が少ないと認識しており、学習者の反応の不在・遅れを理解・聞き取り上のトラブルとみなして発言を繰り返しているが、その反応の不在・遅れは学習者の反応をする必要がないという意識によって生じており、誤解が生じていること、また、JJはJCの笑いに誘発される形で笑う場面は多々見られ、JJにとっては笑いによる反応をしてもいい場面である一方、学習者にとってはJJの笑いが期待される場面ではなく、JJの「笑い」が理解できないという誤解が生じていることがわかった。 本研究で明らかとなった結果は、聞き手行動の使用数からその特徴、相違を明らかにしてきたこれまでの研究に会話の構造、展開という視点を取り入れた微視的分析が必要であることを示したという点で貢献できたと考える。そして、聞き手行動に関してあまり研究が進められていない中間言語語用論の分野に貢献できたと思われる。
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Research Products
(4 results)