2009 Fiscal Year Annual Research Report
多官能性ヘテロπ電子系構築を指向した新規触媒的付加反応の開発
Project/Area Number |
09J08551
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 太久真 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 白金触媒 / ベンゾセレノフェン / 分子内付加反応 |
Research Abstract |
まず初めに、π電子親和性遷移金属触媒による、ホスフィン化合物のアルキンへの分子内付加反応を試みた。想定される反応機構は、アルキンがπ電子親和性遷移金属触媒により活性化を受けたのち、リン原子によるアルキンの求核攻撃により環化反応が進行するというものである。しかしながら、種々の遷移金属触媒存在下で検討を行ったものの、望みの反応は進行しなかった。これは、リン原子の遷移金属触媒への配位が極めて強いため、最初の段階であるアルキンの活性化が強力に阻害されたためであると考えた。そこで、金属への配位性がより温和であり、またリン化合物と同様に機能性分子としての応用が期待される化合物として、セレン化合物合成への適用を検討した。分子内にアルキン部位を持つセレニドを、2価塩化白金触媒存在下で反応させたところ、炭素-セレン結合が開裂し、アルキンに分子内付加した生成物が得られた。構造をNMRにより解析したところ、この化合物はベンゾ「b]セレノフェンであった。一般に、これらの化合物の既知の合成法は化学量論量の試薬が必要であったり、反応条件が厳しかったりするなどの制限があった。特に、ベンゾ[b]セレノフェンの触媒的合成法は我々の知る限り報告されていなかった。一方でこの触媒反応の適用範囲は広く、種々の類縁体を高収率で与えた。また、反応は室温で進行し、反応時間も短いため、極めて簡便な操作で目的のベンゾ[b]セレノフェンを得ることができた。さらに本反応の反応機構に関する知見を得るために重水素化実験を行ったところ、複数の機構が競争的に関与する機構であることが明らかになった。これは、我々がすでに報告した反応の機構を包含するものであり、さらなる反応設計に関連して重要な知見であると考えられる。
|
Research Products
(3 results)