2010 Fiscal Year Annual Research Report
成人期のAD/HD患者に対する認知行動モデルに基づく心理療法の検討
Project/Area Number |
09J08560
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
金澤 潤一郎 北海道医療大学, 大学院・心理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 成人期の注意欠如・多動性障害 / 認知行動療法 / 心理療法 / 成人期のAD/HD症状の測定尺度 |
Research Abstract |
本研究の目的は成人期の注意欠陥多動性障害(AD/HD)患者を対象として,認知行動モデルに基づいた基礎研究と効果研究を行うことであった。本年度は成人期のADIHD症状を測定する自己評定式尺度の開発,および成人期のAD/HDに対する認知行動療法の効果研究を行った。 基礎研究として,Adult AD/HD Symptoms Scale(AASS)を開発した。一般成人770名を対象とした調査を行った結果,確認的因子分析によってDSM-IVと同様の高次2因子構造が確認されたことから,因子的妥当性と内容的妥当性が確認された。AASSの内的整合性は十分に高い値であった。さらに他の尺度との相関分析の結果から,構成概念妥当性が示された。成人期のADIHD患者群(45名)のAASS得点は一般成人群と比較して有意に高く,群間の効果量が大きいことから臨床的妥当性が示された。以上の結果から,AASSは高い信頼性と妥当性を有することが明らかにされた。 次に効果研究として,成人期のAD/HD患者11名を対象に日常生活上の工夫である補償方略の習得を目指した週1回全6回の個人面接プログラムを行った。介入前から介入後にかけてAD/HD症状得点,気分状態の緊張得点と混乱得点,機能障害得点が有意に減少した。また,すべての指標の得点は健常域に達した。さらに介入1ヶ月後のフォローアップ調査の結果,機能障害の「社会生活」得点のみが介入後と比較して有意に悪化したが,その他の指標で介入効果が維持された。介入後に悪化した機能障害の「社会生活」得点も「軽度」の範囲内であった。これらの結果から,成人期のAD/HD症状を訴える者に対して認知行動療法は有効といえる。 これらの知見はわが国で初の試みであり,海外で一般的に使用される薬物療法が制限されているわが国において,心理療法の実施と効果測定のために有用な知見となる。
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Research Products
(2 results)