2009 Fiscal Year Annual Research Report
チタン酸バリウムストロンチウムにおける高周波誘電特性の発現メカニズムの解明
Project/Area Number |
09J08561
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
寺西 貴志 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | チタン酸バリウムストロンチウム / 強誘電体 / リラクサー強誘電体 / 散漫相転移型強誘電体 / 広帯域誘電分散スペクトル / 複素誘電率 / 高周波誘電率測定 / 分極挙動 |
Research Abstract |
チタン酸バリウムストロンチウムBa_<0.6>Sr_<0.4>TiO_3(BST-0.6)について、開発した高周波複素誘電率測定技術を用いて、数GHzまでの複素誘電率を測定した。さらに、THz領域で反射率測定を行い複素誘電率を決定した。得られたkHz~THz領域までの複素誘電率を周波数関数の理論式で最小二乗フィッティングすることで、kHz-THzまでの広帯域誘電分散スペクトルを得た。これにより、双極子分極、イオン分極、電子分極由来の誘電率(ε_<dipole>,ε_<ionic>,ε_<electronic>)を同時に定量化することが可能となった。結果BST-0.6においては、非常に大きいイオン分極(ε_<ionic>)を持ち、室温付近での双極子分極(ε_<dipole>)の寄与は非常に小さいことがわかった。一般的にイオン分極の緩和周波数は非常に高く数THzまで緩和を示さないため、これがBST-0.6の優れた高周波誘電特性の直接的な発現要因であることが明らかとなった。また、この広帯域誘電分散スペクトル法を用いて、通常の強誘電体であるBaTiO_3(BT),リラクサー強誘電体であるBaZr_<0.25>Ti_<0.75>O_3(BZT-0.25)についても分極挙動の詳細な解析を行うべく複素誘電率の測定をした。結果、強誘電体であるBTと散漫相転移型強誘電体であるBST-0.6は、相転移温度付近でε_<ionic>の温度変化に対する挙動は類似し、BST-0.6とリラクサー強誘電体であるBZT-0.25は相転移温度付近でε_<dipole>の温度変化に対する挙動は類似した結果となった。つまり、強誘電体のリラクサー化は、DPT強誘電体を経由してε_<ionic>とε_<dipole>の連続的な挙動変化で説明ができるということが明らかとなった。強誘電体のリラクサー化のメカニズムを、各分極種による誘電率の変化で定量的に説明した初めての研究例となった。
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Research Products
(6 results)