2009 Fiscal Year Annual Research Report
アジア途上国沿岸域におけるダイオキシン類の汚染実態と歴史トレンドの解明
Project/Area Number |
09J08562
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
染矢 雅之 Ehime University, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 環境汚染 / アジア途上国 / 沿岸域 / ダイオキシン類 / 二枚貝 |
Research Abstract |
平成21年度は、ダイオキシン類汚染の空白地帯であるアジア途上国の沿岸域に着目し、二枚貝のイガイを指標生物としてその実態解明を試みた。ダイオキシン類の分析として、塩素化ダイオキシン類の化学分析とダイオキシン様化合物の総量の把握に有用なDR-CALUXバイオアッセイを実施し、両手法の結果を統合的に評価した。分析の結果、全ての試料から塩素化ダイオキシン類(PCDD/Fs及びdioxin-like PCBs)が検出され、その汚染は広くアジアの沿岸域に拡大していることが判明した。イガイから検出されたダイオキシン類の濃度は、工業地域・都市部など人間活動の活発な地域で高く、焼却施設や農薬の不純物、PCB製剤など周辺地域におけるダイオキシン類の発生源の存在が示唆された。イガイから検出されたTEQs濃度は香港で最高値が得られ、カンボジア、フィリピン、韓国、日本、インドネシアでも相対的に高い濃度を示した。とくに、カンボジア、フィリピンなどのアジア途上国沿岸域から、日本などの先進諸国に匹敵もしくは上回るレベルの塩素化ダイオキシン類が検出された事実は注目すべきであり、魚介類を摂取するヒトの健康リスクの視点から、今後より詳細なダイオキシン汚染の実態調査が必要なことが示された。次いで、アジア沿岸域に残留する塩素化ダイオキシン類以外のダイオキシン様化合物の総量とそのリスクを包括的に理解するため、一部のイガイ試料を対象にして、DR-CALUXアッセイを試みた。その結果、全ての試料において活性が認められ、そのレベルはいずれの国・地域に関しても化学分析値より高い値を示した(2.5-31倍)。これらの結果から、WHOによって毒性等価係数TEFが定められた塩素化ダイオキシン類以外に、AhRとの結合性を示す化合物がアジア沿岸域に相当量残留することが示唆された。 本研究により、途上国を含むアジア沿岸域のダイオキシン類汚染の実態の一部が明らかになった。
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