Research Abstract |
低温型・高温型蛇紋石の粘性率比を直接決定するという目的で,かんらん石を含めた2相系の相対強度実験を行った.実験は,広島大学設置の固体圧式変形試験機を用いて行い,温度250,300℃,封圧1GPa,定歪速度下(10^<-4>~10%<-5>s^<-1>)で行った.その結果,低温型蛇紋石と高温型蛇紋石の粘性率には,5~7倍の差が存在した.また,かんらん石と低温型蛇紋石の粘性率比は9~12倍,かんらん石とアンチゴライトの粘性率比は1-2倍であった.このことは,沈み込みプレート境界面上に形成される蛇紋石種の違いによって,プレート間カップリングの程度が大きく変化することを示唆する. 次に,岩石の破壊伝播過程の鉱物種・封圧依存性を明らかにする目的で,東北大学設置のガス圧式変形試験機を用いてstick slip実験を行った.試料は低温型蛇紋石,高温型蛇紋石,かんらん石の3種類を用い,封圧を60,100,140,180MPaと変化させた.その結果,低温型蛇紋石については,全ての封圧において,初期に数m/sで破壊伝播する様子が確認できた.封圧100~180MPaの実験では,10~数10ミリ秒の低速破壊伝播の後に高速破壊(数km/s)に至った..しかし,封圧60MPaの実験では,非常に低速の破壊伝播(0.1mls)のみで特徴付けられ,高速破壊に至らず応力降下した.アンチゴライトとかんらん石については,封圧100MPa以上において,高速破壊(数km/s)のみで特徴付けられるstick slipを経験した.封圧60MPaにおいては,リザーダイトの高封圧下(100~180MPa)での実験と同様の破壊伝播過程が認められた.以上のことから,一般に岩石の破壊伝播速度には鉱物種と封圧による両方の依存性があると考えられる.
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