Research Abstract |
昨年度(T-motifを利用した大規模構造作製技術の考案,複数種類の構造作製,アルゴリズミック・セルフアセンブリへの拡張)に引き続き,本年度はT-motifを利用した複合ナノデバイス作製のための技術を開発した.具体的には,「基板上成長法」により大規模成長するT-motifアレイとDNAオリガミと呼ばれるアドレッシング可能な100nm四方程度の構造を組み合わせた,大規模ナノ構造の作製をおこなった.これにより,将来的には,複数の機能性粒子が必要な小規模な反応系についてはDNAオリガミ上で,一方で大規模な反応系についてはT-motif上でおこなうことができる.本技術は,それぞれを組み合わせた複合的なデバイスを作製するための基礎となる. また,これと並行して,基板上成長の自己集合と吸着を説明する理論の構築,およびこの理論を利用した例として,T-motif構造の構造形成に関する速度論シミュレーションをおこなった,理論は三段階からなる.第一段階は「自己集合」と「吸着」の現象に関し,前者はDNAのハイブリダイゼーションについてNearest-Neighbor法を用いることで,後者は基板-DNA間の相互作用についてDLVO理論を用いることで,それぞれの自由エネルギー変化を算出した.第二段階として,算出した自由エネルギー変化を熱力学平衡の式に導入し,それぞれの状態間の関係を明らかにした.第三段階として,第二段階で求めた平衡式から準静的状態における速度式を導出し,状態間の速度を算出した.これにより,それぞれの状態における時間的発展を任意の基板,イオン濃度や温度などで表現することができる.ここではその具体例としてリング構造の基板上成長シミュレーションを行ない,実験結果との定性的な一致をみたことで,理論の妥当性を確認した.この理論とシミュレーションは,今後さまざまな条件での基板上成長法の設計に重要な知見を与えるものである.
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