2011 Fiscal Year Annual Research Report
近紫外線(UVA)が引き起こす細菌障害性を修復する機構の解析
Project/Area Number |
09J08670
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平田 晶子 (濱本 晶子) 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 紫外線 / SOS応答 / 腸炎ビブリオ / Ultraviolet A / Ultraviolet C / 殺菌 |
Research Abstract |
細菌は紫外線照射等によって引き起こされたDNA損傷を自己修復する機構を持っており、その1つとしてSOS応答が知られている。紫外線の中でも、ultraviolet C (UVC)照射がSOS応答を引き起こすことは知られているが、UVCと同程度の殺菌効果を発揮する高エネルギーultraviolet A (UVA)照射が、同様なSOS応答を引き起こすかどうかは明らかでない。また、SOS応答機構はこれまで大腸菌を中心に解析が進められてきたが、日本での感染者の多い腸炎ビブリオではSOS応答機構についてはほとんど解析されていない。 本研究では、recA欠損株、lexA変異株を作製し、まず腸炎ビブリオにおいてSOS応答が機能しているのか、また高エネルギーUVA照射時にSOS応答が引き起こされるかを検討した。 大腸菌のSOS遺伝子との相同性解析により、腸炎ビブリオにおいて7つのSOS遺伝子recA、1exA、uvrA、uvrB、vp2342、ruvA、ruvBを推定し、紫外線照射後のこれらの遺伝子発現をリアルタイムRT-PCRによって検討した。その結果、UVC照射の場合、野生株でこれら7つ全ての遺伝子発現が増加し、recA欠損株やlexA変異株ではこれらの遺伝子の発現増加は認められなかった。また、UVC照射後の生存率は、recA欠損株、lexA変異株では野生株と比較して、著しく低下した。 一方、高エネルギーのUVA照射の場合では、上記の7つの遺伝子群の発現は野生株であまり変化せず、UVA照射による生存率は野生株と変異株とでほぼ同様であった。 以上の結果から、腸炎ビブリオにはrecA-lexAを介したDNA修復遺伝子群(SOS遺伝子)が存在しており、この応答はUVC照射時に強く誘導され、UVC耐性に重要な働きをしているが、UVA照射ではあまり誘導されず、UVA耐性には関与していないことが示唆された。 本研究で開発した高エネルギーのUVA-LEDを用いた新しい殺菌システムは、従来のUVCの波長を用いた紫外線殺菌と比較して、細菌のストレス応答を引き起こしにくい条件で殺菌を行うことが示唆された。
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