2010 Fiscal Year Annual Research Report
〈日系人〉カテゴリーの生成と動態--現代世界の人類学的研究
Project/Area Number |
09J08689
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
石田 智恵 立命館大学, 先端総合学術研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 日系人 / カテゴリー / 分類 / 名前 / 南米 / 集団 |
Research Abstract |
平成22年度は、(1)民族的カテゴリーをめぐる人類学的議論、(2)「日系人カテゴリー」の同一性の論理、(3)南米とくにアルゼンチン日系人の歴史、という3つのレベルで研究を進めた。このうち(1)は交付申請書に記載した研究実施計画の(1)議論枠組みの精緻化に、(3)は(2)現地調査及び資料分析に対応し、(2)は両方の作業にかかわる論点となる。それぞれについて以下の成果を得た。 (1)論文や口頭の形で発表するにはいたらなかったものの、「系譜」や「出自」というタームを中心的な概念として議論を発展させた親族(関係)論の研究動向のサーベイを行い、親族研究が明らかにしてきた集団的現実と「日系人」のそれとの比較の可能性を模索した。これにより、新生殖技術や国際養子縁組などに焦点をあてた近年の親族論を通して、人種・民族論と親族論が同じ俎上で論じるべき問題を孕んでいるという着想を得た。 (2)については、アルゼンチン・ブエノスアイレス州の日系人コミュニティでの約2ヶ月間の調査を通じて、前年度の調査では把握できなかった世代、居住地、職業による「日系人」「日系社会」の捉え方、関わり方の違いが明らかになった。また、先行研究が報告しているブラジルの二世の活動・主張と、アルゼンチンの二世の活動・主張の同時性、共通性と差異も確認された。以上は一世から二世へと日系社会の中心が移り変わる時期に顕在化した日系社会の混乱、改革を訴える言説に注目したもので、これにより、「日系人」を事例とし、広く移民研究において世代間での集団的同一性の継承に関する議論を展開する基礎を固めた。
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Research Products
(1 results)