Research Abstract |
すべり覚センサは,ロボットが物体を器用に,かつ壊さず扱うためには必要不可欠なセンサであり,ロボティクス・メカトロニクス分野の発展のためには重要な研究開発である.本すべり覚センサは感圧導電性ゴムの抵抗値変化特性を利用している.感圧導電性ゴムはシリコンゴム内に炭素粒子を均一に分布させた構造をしており,法線方向力の他に,接線方向力が作用した場合においても,抵抗値変化を生じる.この接線方向力による抵抗値変化を利用し,物体のすべりを検出するセンサの開発を行っている.本センサは電極と感圧導電性ゴムというシンプルな構造となっており,柔軟,薄型,軽量という特徴を有する.感圧導電性ゴム表面において物体が滑ろうとすると,感圧導電性ゴム表面に接線方向力が作用するため,ゴム内部粒子の分布状態が変化し,電極間電圧Vpにおいて,直流成分の中に高周波な成分が含まれる.この高周波な成分は接線力が作用した場合においてのみ生じるため,この信号成分を離散ウェーブレット変換によって抽出し,滑り出力として利用している.しかし,この高周波な信号成分が発生するメカニズムについては不明確であった.そこで,物体が滑り出す際に生じるゴム表面の固着とはがれによる振動から高周波成分発生が発生する,という仮説を立てた.これを検証するため,高速カメラによる観察実験を行った.その結果,固着とはがれの挙動と高周波成分発生の関連は薄い,という結論を得た.一方で,感圧導電性ゴムと電極間の相対変位と高周波成分発生との関係性を示す結果を得た.また,すべり覚センサの応用範囲を広げるため,荷重分布中心位置検出触覚センサと,本すべり覚センサを融合させ,配線数4本で荷重変化,滑り,およびその方向を検出可能なセンサシステムを構成した.本センサは非常に小型軽量であり,高速応答(1ms)なため,携帯電話やゲーム機などに使用する入力インターフェースやロボットハンドへの応用が期待されている.
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