2010 Fiscal Year Annual Research Report
カイコの桑食性と性フェロモン応答性を決定する伴性遺伝子Bmacj6の分子機能
Project/Area Number |
09J08743
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 告 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 嗅覚 / 味覚 / Olfactory receptor / Gustatory receptor / Odorant binding protein / Chemosensory protein / 転写因子 / RNAseq |
Research Abstract |
spliは、転写因子をコードするBmacj6が欠失している突然変異である。本年度は、spli方変異体において、幼虫の桑への集合性や食性に異常が生じる点に着目した。それらの異常が生じるメカニズムを解明することができれば、カイコの寄主選択機構の遺伝的な基盤が明らかになる点に意義がある。spliでは、Bmacj6の欠失が原因で、嗅覚システム、味覚システムにおいて重要な役割を果たしている遺伝子の転写に異常が生じている可能性がある。そこで、雄成虫から触角のRNAを、雄幼虫から触角と小顎のRNAを抽出して、Illumina GA2XでRNAseqを行い、正常系統とspli系統間で発現量に差のある遺伝子を探索した。得られた配列データ(35bp,数千万リード)の中で、14706個の遺伝子内にユニークにマップされたものについてRPKM値を算出し、WAD法によって、発現量の差に関して順位付けを行った。その結果、雄成虫触角、雄幼虫触角において、上位100位内にランキングされた嗅覚受容体は、雄成虫におけるOr1(2位)だけであった。雄幼虫小顎においては、調査した17個の味覚受容体の中で、上位100位内にランキングされた味覚受容体は存在しなかった。一方、匂い結合タンパク(OBP)や化学受容タンパク(CSP)をコードする遺伝子が上位100位内に複数個含まれていた。OBPやCSPは、触角や小顎において、匂いや味の原因となる化合物を輸送する役割を担っていると考えられていることから、spli系統の蟻蚕に認められる桑への集合能力の低下や、幼虫に認められる食性の異常において、OBPやCSPの発現異常が関与していることが示唆された。
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