2011 Fiscal Year Annual Research Report
下部マントルのレオロジー解明に向けた実験岩石学的研究
Project/Area Number |
09J08826
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
辻野 典秀 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 下部マントル / レオロジー / 分子動力学法 / MgO / 変形実験 / (Mg,Fe)SiO_3-ペロブスカイト / すべり系 |
Research Abstract |
本研究では下部マントル(>24万気圧)のレオロジー解明に向けた高圧実験を主とした研究を行う。そこで、高圧下での下部マントル鉱物の物性を調べるために本研究では今年度、以下の2点について実験を行った。 (1)子動力学法(MDシミュレーション)を用いたMgOの格子拡散係数の温度圧力依存性および拡散機構の変化:分子動力学法を用いて、200GPa・6000Kまでのショットキー欠陥を介した格子拡散係数を決定した。ショットキー欠陥を介した格子拡散係数は25GPaまでと100GPa以上での圧力依存性は大きく異なり、低圧下では負の圧力依存性を、高圧下では正の圧力依存性を持つことを確認した。格子拡散係数の圧力依存性の変化は、原子が格子間に長時間滞在する拡散から格子間をジャンプする拡散への機構の変化で説明できることがわかった。 (2)下部マントル条件での変形実験:地球下部マントル最上部条件でのPvの転位クリープにおける主要なすべり系について調べた。実験には東京工業大学・マグマファクトリーに設置されている三軸変形川井型装置(KATD)を用い、初めて下部マントル最上部条件(25GPa・1873K)で一軸圧縮、および、せん断変形実験を行った。出発物質にはカンラン石と斜方輝石を用いた。カンラン石を用いた一軸圧縮変形実験では有意な結晶の選択配向は観察されず、粒界すべり、もしくは拡散クリープによる変形が起きたことがわかった。斜方輝石を出発物質に用いたせん断変形実験では、転位クリープにおける主要なすべり系が[100](001)であることがわかった。この結果から、全マントルで報告されている下部マントル最上部での地震波異方性がPvの主要なすべり系によって説明できることがわかった。
|