2009 Fiscal Year Annual Research Report
神経ダイナミクスと情報表現を繋げる数理理論の構築と生理実験による検証
Project/Area Number |
09J08859
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
太田 桂輔 Tokyo Institute of Technology, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 位相応答曲線 / 符号化・復号化 / Spike Triggered解析 / 海馬CA1錐体細胞 / 電気生理実験 / 摂動展開 / 固有値解析 / 次元縮約 |
Research Abstract |
内容本研究課題の初年度にあたる本年度は,神経ダイナミクスと神経細胞の情報表現を繋げる数理理論の構築を行った.おおよそ周期的に発火している単一神経細胞に注目し,神経ダイナミクスを記述する位相応答曲線と神経細胞の発火を誘発させた入力集合の平均であるSpike Triggered Average(STA)・分散であるSpike Triggered Covariance(STC)の間に成り立つ関係式を解析的に導出した.そして,神経細胞モデルを用いた数値実験により導出した関係式が正しいことを確認した.さらに本研究ではSTCの固有値解析を行い,実際に神経細胞が符号化した入力空間(特徴空間)を同定した.特徴空間はSTCの非ゼロ固有値に対応する固有関数で表現される.STCの正の固有値に対応する固有関数で表現される入力刺激は周期的に発火している神経細胞の発火タイミングを前進させ,STCの負の固有値に対応する固有関数で表現される入力刺激は発火タイミングを遅らせる傾向にあることを数値実験により明らかにした.そして,ラット海馬CA1錐体細胞の位相応答曲線を測定し,構築した数理理論を用いてラット海馬CA1錐体細胞のSTCを求め,固有値解析を行った.ラット海馬CA1錐体細胞が符号化した入力空間が4つの固有関数で表現できることを示唆する結果を得た. 意義・重要性先行研究から周期発火状態にある神経細胞のSTCを同定するために必要なスパイク数は10の8乗以上である.これはIn vitro実験では観測不可能な値であり,STCを実験により直接求めることはできない.従って,神経細胞の特徴空間を求めることは不可能であった.本理論は位相応答曲線を介してSTCを求めることでこの問題を解決し,神経細胞の特徴空間を同定することを可能としている.
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Research Products
(6 results)