2010 Fiscal Year Annual Research Report
子どもたちにとっての児童養護施設-住まう場という観点から
Project/Area Number |
09J08924
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
大塚 類 宮城教育大学, 教育学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 児童養護施設 / 現象学 / 気になる子ども / 学校教育 |
Research Abstract |
本研究は、ハイデガーの思索を主たる理論的背景としながら、子どもたちの日常生活が生起する児童養護施設や学校という「場」と、その場における子どもたちの在り方を、事例に基づき明らかにすることを目的としている。本年度は、児童養護施設でのフィールドワークを継続することに加えて、児童養護施設を校区にもつ小学校への定期的なフィールドワークと距職員へのインタビューや、施設の学習ボランティアへのインタビューなど、複数の視点から、児童養護施設で暮らす子どもたちの在りようを検討することを試みた。 論文「施設で暮らす少女たちの他者関係の困難さ」では、施設において自立を目指す少女たちの具体的なエピソードに基づき、住まう場としての施設が、少女たちに共有されることの難しさを描き出した。論文「特別な教育的ニーズのある子どもへの学習支援について」では、施設の学習ボランティアのインタビューを分析することにより、単に知識を教えるだけに留まらない学習ボランティアの役割と意義や、子どもの持っている可能性について示すことができた。学会でのシンポジウム提題「顕在的な他者経験を介した相互主観的な意識への歩み」では、児童養護施設の成長の歩みを現象学に基づき解明するこれまでの研究が、現象学の発展に寄与しうることを示した。 上述したように、2010年度は、児童養護施設の子どもと関わる学習ボランティアや、学校教職員へのインタビューを行なうことにより、施設で暮らす子どもの抱える問題が、発達障碍や学校不適応といった、現在の学校現場が苦慮している子どもの問題と多く重なることが明らかとなった。したがって、児童養護施設の子どもたちの具体的な事例に定位しつつ、子どもたちの抱えるさまざまな問題の解決法を探る本研究は、ある一定の普遍性を備えており、そこに本研究の意義や重要性がある、といえるように思われる。
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Research Products
(4 results)