2011 Fiscal Year Annual Research Report
固体触媒表面での電荷移動と化学反応のダイナミクスに関する理論的研究
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09J08941
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 康光 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Multicomponent DFT / Time-Dependent DFT / 時間依存変分原理 / 電子・核ダイナミクス / 非断熱過程 / 擬交差 / 強レーザー場 / 固体表面 |
Research Abstract |
本研究の最終目標は、固体表面反応や触媒反応における、電子-核ダイナミクスをシミュレーションすることのできる計算手法理論の確立である。その目的のために、博士課程第1年度目においては、まず実時間発展形式のTime Dependent Density Functional Theory(TDDFT)を用いた電子ダイナミクス計算手法と、Ehrenfestの理論による核ダイナミクスの理論が、どのようにこの問題に適用できるかを研究した。博士課程第2年度目では、核の量子性が顕著になる系の電子-核ダイナミクスを扱うことのできる理論の開発を目指して研究を行った。私は、E.K.U.Gross教授のグループのA.Abediが2010年に発表した、系全体の時間依存シュレディンガー方程式を、核の方程式と電子の方程式に正確に分割するという理論に着目し、その正確に分割された2つの式から、TDMCDFTの枠組みへの移行を試みた。その結果、Time-Dependent Variational Principleに基づく、一粒子軌道についての式の組で電子-核ダイナミクスを記述する理論を開発することができた。博士課程第3年度目では、開発された手法の妥当性を、Exact計算、TDH近似、そしてEhrenfest法とし比較し、検討した。これらの手法の時間依存有効核ポテンシャルを比較することが、近似手法の有効度を見るのに非常に優れていることが明らかになった。さらに、最新の、強アト秒レーザーにより電子ダイナミクスをコントロールすることにより化学反応をコントロールする実験技術について、Exact TDPESの解析を行い、このような複雑な非断熱過程の電子-核ダイナミクスを計算するためには、どのような時間依存有効核ポテンシャルが必要なのかを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究により、核の量子性が顕著になる系を含む、固体表面や触媒反応の電子-核ダイナミクスをシミュレーションするための手法の出発点となる式が明らかにされた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で開発された手法、および本手法の概念にのっとり、系を拡張していくことで、一般的な系を扱うことのできるシミュレーション理論の確立を目指す。多電子系の記述にはTDDFTを用い、多核系の記述にはMCTDH理論を用いる。
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Research Products
(3 results)