2009 Fiscal Year Annual Research Report
新規多機能性分子の開発を目指した多成分系自己集合型異種多核金属錯体の構築
Project/Area Number |
09J08958
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒田 陽子 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 超分子化学 / 錯体化学 / 多成分系自己集合 / 段階的構築 / 位置選択的配位子交換 / Ti(IV)イオン / Pd(II)イオン |
Research Abstract |
複数種の金属イオンと配位子からなる多成分系の超分子金属錯体の構築法を確立することは、より高次な分子構造と機能を創出するストラテジーの一つとして、近年注目を浴びている。本研究では、これまでの比較的単純な系においてのみ制御可能であった金属配位結合を駆動力とした自己集合系を拡張し、独自に開拓したTi(IV)イオンを中心とする動的化学を基盤とした、多成分系自己集合型システムの構築を行った。これまでの研究で、新規[Ti(cat)_2(acac)]錯体(cat=catecholate,acac=acetylacetonate)を定量的に合成する手法を確立している(J.Am.Chem.Soc.2008,130,10058)。本年度の研究では、この新規[Ti(cat)_2(acac)]錯体のアセチルアセトナト部位がトロポロナト部位と位置選択的に配位子交換可能であることを見出した。さらに、HSAB則に基づき設計したビリジルカテコール配位子から形成したPd(II)Ti(IV)環状錯体をブレカーサーとし、ビストロポロン型架橋配位子と配位子交換反応を行うことで、従来のワンポットの合成法では形成困難な高次自己集合型錯体が効率的に構築できることを明らかとした。この成果はChemistry-A European Journal誌において掲載し、また発表論文と同じ巻号内において口絵としてハイライトされた。また、[Ti(cat)_2(acac)]錯体ユニットを二カ所に有するPd(II)Ti(IV)環状錯体の内部空間へのカチオンゲスト認識を検討した結果、錯体の内部にジカチオン型ゲスト分子が取り込まれることにより、Ti(IV)イオン周りの配位構造変化を伴い、かご型錯体へと構造変換するという特異な現象を見いだした。これは、環状錯体内部にカチオンが取り込まれることにより、安定化に寄与していたプロトンが放出され、[Ti(cat)_2(acac)]錯体部位が不安定化したためだと考えられる。この結果から[Ti(cat)_2(acac)]錯体の形成においてプロトネーションが重要であるという、新規Ti(IV)錯体の性質をより詳細に明らかにすることに成功した。この様に、自己集合型錯体の結合部となる金属イオン周りの配位構造の性質を理解することは、今後より精密に多成分系自己集合を制御する上で重要であると考えられる。
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Research Products
(3 results)