2009 Fiscal Year Annual Research Report
蛍光スペクトル情報に基づいた術中精密診断・治療システムの開発
Project/Area Number |
09J08965
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安藤 岳洋 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1
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Keywords | 脳腫瘍 / 蛍光計測 / 5-ALA / スペクトル / レーザ |
Research Abstract |
本年度は、これまでに行ってきた蛍光スペクトルと病理診断の比較をより多くの組織について行うことで新たな知見を得ることを目的とした。これまでの装置では計測安定性が悪く、症例間の比較が困難であったため、装置の改良を行った。具体的には、光ファイバを用いていた導光していた部分を減らし、ミラーとレンズのみで光学系を構成した。蛍光物質(Protoporphyrin IX,PpIX)の溶液を用いて計測安定性の評価を行ったところ、975回のスペクトル計測に対して、平均11438.1[a.u]に対して標準偏差779.66[a.u.]であった。一様な非腫瘍組織の蛍光強度は、平均1408.0[a.u.]、標準偏差396.4[a.u.]であったことから、計測装置のばらつきは測定対象のばらつきよりも十分に小さく、症例間の比較が可能であることが示された。この計測装置を用いて、10症例26サンプルの神経膠腫のPpIX蛍光を計測し、蛍光計測した組織表面の病理診断結果との比較を行った。計測の結果、PpIXの蛍光強度分布と腫瘍分布に相関がみられない症例があった。そこで本研究では悪性度を表す指標として、細胞増殖能と密接な関係がある細胞密度を選び、PpIX蛍光ピーク強度・530nm自家蛍光強度との相関を調べた。その結果、計測結果を症例間で比較することにより、PpIX蛍光ピーク強度によって細胞密度の下限を、530nm自家蛍光強度によって細胞密度の上限を知ることができるとわかった。この手法を用いて細胞密度を予測したところ、いくつかの症例について偽陽性や偽陰性を解消し、病理診断結果と一致した。PpIX蛍光スペクトルを計測することで腫瘍境界を判定できるという可能性が示唆された。
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