2009 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙のインフレーション機構に関する超弦理論を用いた研究
Project/Area Number |
09J08966
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 洸 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | インフレーション宇宙 / 宇宙密度揺らぎ / 超弦理論 / 宇宙マイクロ波背景放射 / 高次元宇宙論 |
Research Abstract |
初期宇宙の加速度的膨張(インフレーション)を引きこしたメカニズムの解明に向けて、私は超弦理論を用いて取り組んだ。インフレーション宇宙の模型としては、スカラー場が平らなエネルギーポテンシャルに沿ってゆっくりと転がる過程でインフレーションが引き起こされる、いわゆるslow-rollモデルの研究がこれまで盛んに行われてきた。しかし同時に、このような平坦なポテンシャルを必要とする模型が素粒子物理・超弦理論の枠内では不自然で、実現されにくい事も指摘されてきた。そこで私は、平坦なポテンシャルを持たない、あるいは4次元重力と直接結合しているために速く転がるスカラー場でもインフレーションを引き起こすことができる点に着目し、そのようなrapid-rollモデルが実現されるための条件及びその安定性を調べた。さらに、rapid-rollインフレーション宇宙において生成される宇宙密度揺らぎを、宇宙マイクロ波背景放射及び宇宙大規模構造に関するデータと比較することで、rapid-rollモデルに対する観測的制限を与えた。また、超弦理論によって予言される膜状の物体であるDブレーンが余剰次元空間中を移動する間にrapid-rollインフレーションが引き起こされる模型を構築した。また、rapid-rpllインフレーション宇宙において観測データと矛盾のない密度揺らぎを生成するため、カーバトン機構と呼ばれる揺らぎ生成機構を超弦理論において実現する模型を提唱した。さらに、インフレーションを引き起こす場以外の軽い場によっても宇宙密度揺らぎがインフレーション中に生成され得る事を示し、この機構が超弦理論の枠内で実現される可能性を議論した。以上の研究を通して、私はインフレーション宇宙の新たな側面を探ると共に、超弦理論の枠内でそれらの機構が実現され得る事を示した。
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Research Products
(10 results)