2010 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙のインフレーション機構に関する超弦理論を用いた研究
Project/Area Number |
09J08966
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 洸 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 量子重力 / 宇宙密度揺らぎ / 非ガウス性 / インフレーション宇宙 / 宇宙マイクロ波背景放射 |
Research Abstract |
時間と空間とに異なるスケーリング則を持たせる事で、重力のくりこみを可能にしようとするLifshitz型量子重力理論においては物質を表すスカラー場(Lifshitzスカラー場と呼ばれる)は宇宙にインフレーションが起きなくとも、宇宙の地平線よりも大きなスケールを持ち、かつスケール不変な場の揺らぎを獲得し得る。そのため、我々の宇宙の大規模構造の種となった宇宙密度揺らぎを生成する上でインフレーション宇宙論に替わる新たな機構として、Lifshitzスカラー場は着目されている。 私が着目したのは、Lifshitzスカラー場によるスケール不変な揺らぎの生成はその特殊なスケーリング則によるもので、場の自己相互作用の強さには依らない点である。これは標準的なインフレーション理論において作られる密度揺らぎには見られない、Lifshitzスカラー場に特有の性質である。そこで私はLifshitzスカラー場が作る宇宙密度揺らぎの統計性を解析し、そのガウス分布からのずれの大きさがPlanck衛星等の近い将来の観測計画において検証され得る事を示すとともに、ずれ方(厳密には、揺らぎの三点相関関数の運動量依存性)自体も特別なものである事を明らかにした。 また私は、インフレーション宇宙論において生成される宇宙密度揺らぎに対して、高エネルギー物理が残し得る痕跡についても調べた。私が特に着目したのは、超弦理論などのミクロのスケールの物理に基づいてインフレーション宇宙を記述する際には、その物理の典型的なスケールに対応した大きさの構造がインフラトン場のエネルギー・ポテンシャル中に生じ得る点である。私はそのような構造が繰り返し現れることで、インフレーション中に生成される宇宙密度揺らぎのスペクトル指数がスケール依存性を持つことを指摘するとともに、揺らぎスペクトルの小スケール側に特徴的な痕跡が残ることを明らかにした。
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Research Products
(10 results)