2009 Fiscal Year Annual Research Report
金融市場に対するディーラー型標準モデルの構築とその実践的応用
Project/Area Number |
09J08971
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山田 健太 Tokyo Institute of Technology, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 確率過程 / エージェントベースモデル / 金融市場 |
Research Abstract |
金融市場で売買を行うディーラーをモデル化するエージェントベースモデルの一種である確率論的ディーラーモデルを用いて、外国為替市場の高頻度データから観測される、価格変動の確率分布に見られるべき則、市場価格から観測されるポテンシャル、そして、取引間隔の非ポアソン性などの経験則を全て再現する確率論的ディーラーモデルの構築に成功した.その結果、取引間隔の非ポアソン性はポアソンパラメータが過去数分間の平均取引間隔に依存する事に起因し、価格変動のベキ則、及び、価格時系列から観測されるポテンシャルの形状を決定するポテンシャル係数はディーラーの戦略パラメータに強く依存する事を明らかにした。また、モデルの理論解析も進め、ディーラーの順張り逆張りを決定する戦略パラメータと価格変動の確率分布におけるべき指数の関係を定量的に導くと共に、市場の不安定性を定量化するポテンシャル係数とディーラーの戦略パラメータの関係も理論的に示し、それらの結果は2010年度のPhysical Review Eに掲載された. この確率論的ディーラーモデルはシンプルな構造をもち理論解析が可能であると共に、市場の本質を捉えた効果が効率的に取り入れられているため、市場の特性を非常によく再現できていると考えられ、数理物理の観点から興味深い.また、これらの結果は昨今頻繁に議論されている金融市場の安定化の問題に対して示唆に富む内容であり、経済学者、日銀、財務省国際局為替市場課からも関心が寄せられており今後の発展が期待されている.
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Research Products
(8 results)