2009 Fiscal Year Annual Research Report
光合成反応中心タンパク質複合体内電子伝達機構の解明、及び光合成の起源の探索
Project/Area Number |
09J08983
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
近藤 徹 Nagoya University, 理学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 光合成 / 電子移動 / 電子スピン共鳴 / ヘリオバクテリア |
Research Abstract |
申請者は始原的な光合成細菌ヘリオバクテリアのRC(HbRC)を用いて時間分解電子スピン共鳴(TR-ESR)測定を行い、光誘起された還元型キノン分子(A_1)と酸化型電子供与体クロロフィル2量体P800(P^+)のラジカル対(P^+A_1)由来のスピン分極(ESP)信号の検出に成功した。その信号形は他のRCのP^+A_1信号の形とは大きく異なっていた。ESP信号は、ラジカル間の距離、分子配向、電子移動速度、などを反映するので、スペクトルのシミュレーションから各パラメータを推定した。さらに詳細な構造情報を得るために配向膜標品で、外部磁場と膜面との角度を変化させながらP^+A_1信号を検出し角度依存性を解析した。PS I RCの結晶構造と電子担体間の相対配置を比較対照としてこの信号を検討した。この結果A_1の分子配向がPS I RCと異なることが推定された。しかし、様々なA_1の分子配向を仮定して解析をしたが、実験結果を完全には再現できなかった。一方、アミノ酸配列の比較から、HbRCはPS I RCよりもA_1結合サイトが親水的でありキノン分子が弱く結合していると推測される。従って、A_1分子配向が違うだけでなく、これ以外の反応速度などのパラメータもHbRCとPS I RCでは異なることが推定され、この決定を進めたい。 最近、共同研究者である大阪大学・大岡准教授らが緑色硫黄細菌RCの部位特異的遺伝子操作方法を世界に先駆けて開発した。申請者は得られた変異型RC標品のESR測定も進めつつあり、キノン結合部位を始めとする様々な電子伝達部位の変異体についても集中的に研究を遂行する予定である。これにより、30億年とも推定される光合成系の進化とその最適化機構について、構造と物理学的側面から理解を進めることができる。
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Research Products
(4 results)