2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J09005
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
森元 良太 Keio University, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 進化論 / 確率 / 遺伝的浮動 / 情報理論 / ベイズ主義 / 最大エントロピー原理 / 合理性 / 自然選択 |
Research Abstract |
本研究の目的は、進化論における確率概念の哲学的意義を明らかにし、生命現象の解明に寄与することである。現代進化論では、生物進化の主要因は自然選択と遺伝的浮動とされている。自然選択とは、生存と繁殖に有利な生物が集団中に増えていく現象で、一方遺伝的浮動とは、生存と繁殖の有利さとは関係なく生物の頻度が変化する現象である。生物学ではこれらの理論および実証研究が盛んにおこなわれているが、理論に内在する哲学的問題については十分に議論されているわけではない。とくに、進化モデルにおける確率概念が何を表しているかは明らかになっていない。このような背景のもと、本年度は「なぜ浮動モデルに確率概念が用いられるのか」という問題に取り組んだ。 従来の議論では、浮動の確率モデルが詳細に分析されていないため、本研究では浮動モデルの数理を徹底的に分析した。浮動モデルでは、遺伝子が次世代に寄与する確率をすべて同じとすることが仮定されている。この等確率の仮定は必ずしも経験的に支持されるものではない。そこで私は、統計物理学者のジェインズの業績を参考に、等確率を仮定せずに浮動モデルを導出した。ジェインズは、情報理論の手法を用いて従来の統計力学モデルを導出した。彼はそのことから、統計力学は情報理論の一分野とみなせることを主張した。私は同様のことが浮動モデルにも当てはまると考え、浮動モデルが情報理論の一部とみなせることを提案した。さらに、ライト・フィッシャーの浮動モデルにおける確率概念を哲学的に検討した。そこでは主に、確率論研究者のゼルナーの研究を参考にした。彼は、確率概念を個人の合理的な信念と解釈する、ベイズ主義者である。ゼルナーは、情報理論において、情報エントロピーを最大にすることから、ベイズの定理を導出した。私はこの業績を参考に、浮動モデルにおける確率概念がベイズ主義的に解釈できることを提示した。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] Drift is not a fiction2009
Author(s)
森元良太
Organizer
International Society for History, Philosophy, and Social studies of Biology
Place of Presentation
The University of Queensland, Brisbane, Australia
Year and Date
2009-07-14
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